金融の豆知識

年金の繰上げ・繰下げ受給について|メリットとデメリットを解説

年金の繰り上げ・繰下げとは?

年金は、老後の安定した生活を支えるために必要不可欠な制度です。
日本の年金制度には、国民全員が加入する国民年金、会社員等が加入する厚生年金、任意で加入できる確定拠出年金があります。
これら3つの制度は、「3階建て」と言われ、日本の年金制度を構成する柱です。

さて、ここでは日本の年金の「繰上げ受給」と「繰下げ受給」という仕組みについて解説します。
繰上げとは、原則として65歳から支給されることになっている年金を、繰り上げて60歳〜65歳の間に受け取れる制度です。
例えば、60歳で定年退職して無収入になった人が繰り上げて受給するケースがあります。
繰下げは、65歳で受け取らず、66歳〜70歳の間で繰り下げて受け取れる制度です。
遅らせるほどもらえる年金額が上がるため、70歳になるまで仕事を続けて収入がある人などに利用されます。

繰上げ・繰下げには、「どちらの方が絶対おトク!」という基準はありません。
受け取る人の事情によって、どちらを選ぶべきか(もしくは65歳から普通に受け取るべきか)が変わってきます。
それを踏まえて、繰上げ・繰下げそれぞれのメリットとデメリットを見ていきます。

繰上げのメリットデメリット

【メリット】

○年金をすぐに受け取れる

時期を繰上げることで65歳よりも前に受け取れることは、何よりのメリットでしょう。
収入がなく毎月まとまったお金が必要な人は、繰上げがベターかもしれません。

○年金の総額が多くなる可能性

早く受け取れることで、77歳ごろまでは65歳から受け取るよりも年金を多くもらうことができます。
しかし、それ以降は、65歳以降にもらっている人の方が多い計算となります。

【デメリット】

○年金が一生涯減額

早く受け取る一番のデメリットです。早く受け取る分、年間の受け取り額は約30%減ることになります。65歳になっても同じ額が一生続きます。

○障害基礎年金がもらえない

通常、60歳〜65歳までの間に事故や病気などで障害を患った場合は、障害基礎年金を請求できます。
しかし繰上げで年金を受け取っている人は、障害年金の請求はできなくなります。
ちなみに、平成30年4月分からの障害等級ごとの年金額は以下なので、参考にしてください。

【1級】779,300円×1.25+子の加算
【2級】779,300円 子の加算+子の加算
第1子・第2子は各224,300円、第3子以降は各74,800円の加算です。
(参考:日本年金機構

繰下げのメリットデメリット

【メリット】

○年金が増額される

例えば、67歳に受け取るとした場合、65歳に受け取る場合よりも16.8〜24.5%増額した金額をもらえます。
70歳からだと42%と半分近く増えることになっています。
(参考:日本年金機構

○働く意欲が湧く

受給時期を繰下げることで、「お金を稼がないと!」、「働かないと!」という意欲が湧きます。年金生活で家にこもりがちになると、生活習慣病や廃用症候群といった病気のリスクが高まると言われます。
働く意欲を保ち健康維持ができる点は、繰下げのメリットの1つでしょう。

【デメリット】

○長生きしないと年金額が少なくなる

メリットで、「繰り下げることで65歳からもらう場合よりも増額できる」と言いましたが、これは毎月の額が増額するということです。
総額については、少なくなる可能性もあります。
例えば、70歳に繰り下げた人の場合、5年早い65歳からもらっている人よりも、およそ82歳になるまでは、総額は少なくなります。
簡単に言うと、長生きしなければ、総額は少なくなる可能性があるということです。

注意点も見て、賢く選ぼう

繰上げ受給・繰下げ受給のどちらを選ぶ場合でも、それぞれの注意点を確認した上で、賢く選ぶことが大切です。
例えば、夫が亡くなって寡婦年金の受給権を持っている人は、繰上げ受給をするとその権利が消滅します。
また繰上げ・繰下げどちらも、一度請求書を出すと請求を取り消すことは原則できないという点も、大切な注意点の1つです。

その他にも、いくつかの注意点があるため、気になる方は日本年金機構のホームページを参考にされてください。

繰上げ請求の注意点
繰下げ請求の注意点

自分の経済的・健康的な事情を考慮しながら、賢い選択ができるようにしましょう。 (ライター:尾崎 海)

最終更新日 2019年05月10日 13956view
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